子どものインフルエンザ
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症です。突然の発熱、頭痛、だるさ、筋肉痛などで始まり、咳や鼻水を伴います。子どもでは嘔吐や下痢がみられることもあります。
多くは数日で自然に回復しますが、熱性けいれんや肺炎などの合併症を起こすことがあり、まれですが特に注意が必要なのがインフルエンザ脳症です。

インフルエンザワクチンは、接種すれば絶対にインフルエンザにならないワクチンではありませんが、小児ではインフルエンザワクチンによって発症するリスクをおおむね半分程度減らすことができます。
また、ワクチンには発症を減らすだけでなく、入院や重症化を減らす効果も期待されています。日本では1990年代に学童へのインフルエンザ集団接種が終了した際に、小児のインフルエンザ脳症や関連死亡が多数報告され、ワクチンによる重症化予防効果が改めて認識されました(註:直接の因果関係は証明されていませんが、重要な疫学的経験です)。
現在、子どものインフルエンザワクチンには、従来の皮下注射に加えて、鼻腔に噴霧するタイプの生ワクチンであるフルミスト®️が選択可能となっています。それぞれの特徴はこちら。
発熱してすぐに迅速検査をすると、実際にはインフルエンザであっても陰性になることがあります。発症直後は鼻やのどのウイルス量がまだ少ないためです。いつもと同じようにやりとりができて、水分がとれている状態であれば、夕方や夜に発熱したからといって、検査のためだけに急いで夜間受診する必要はありません。翌朝の診療時間内の受診で対応できる場合が多いでしょう。発熱から12時間〜24時間経過して検査を受けた方がより迅速検査の正確性が増すことも知っておくとよいでしょう。
一方、乳児や基礎疾患のあるお子さん、水分がほとんどとれない場合、けいれんや意識の異常がある場合などは、早めの受診が必要です。
タミフル®️(オセルタミビル)などの抗インフルエンザ薬は、発症早期に使用することで、健康な子どもでは症状が続く期間をおおむね1日程度短くすることが期待できます。
一方、健康な子どもの多くは自然に回復するため、「飲まなければ治らない薬」ではありません。年齢、症状、発症からの時間、基礎疾患などを考慮して使用を判断します。
一般に発症から48時間以内に開始すると効果が得られやすいとされています。ただし、重症化リスクが高い場合などでは、48時間を過ぎていても治療を検討します。
ご家庭では体温だけでなく、水分がとれているか、尿が出ているか、呼びかけへの反応がおかしくないかを確認してください。水分がとれていれば、無理に食べさせる必要はありません。水分は一度にたくさん飲ませるより、少量ずつこまめに与えます。
抗インフルエンザ薬は様々な種類・服用方法があります。特に1回使い切りのタイプは失敗できないため、お子さんが飲み慣れた(使い慣れた)剤型を選びましょう。熱性けいれんの予防薬を処方されているお子さんは指示に従って使用します。解熱剤は「平熱に戻す」ためではなく、つらさを和らげ、水分をとったり眠ったりしやすくするために使用します。
基本となるのは、手洗い、換気、タオルやコップなどの共用を避けることです。ご家庭では、可能であれば寝る場所を分け、看病する家族をできるだけ固定します。乳幼児や基礎疾患がある人、高齢者など、重症化リスクの高い家族が同居している場合には特に注意が必要です。状況によっては、同居家族への抗インフルエンザ薬の予防投与を検討することもありますのでご相談ください。登園・登校は規定のお休み期間を守って再開しましょう。
インフルエンザでは、まれにインフルエンザ脳症を起こすことがあります。急速に進行することがあるため、特に発症してから最初の数日間は注意が必要です。
けいれんが5分以上続く、けいれんを繰り返す、けいれん後も意識が戻らない、呼びかけても反応が悪い・目が合わない、意味の分からない言動が長く続くといった症状があれば、夜間でも速やかな受診が必要です。
また、インフルエンザでは、突然走り出す、感情の錯乱、意味の分からないことを言う、幻覚のような訴えをするなどの異常行動がみられることがあります。かつてはタミフルなどの抗インフルエンザ薬との関連が疑われましたが、薬を使用していない子どもにも起こります。異常行動は発症早期、特に最初の2日間に注意が必要です。薬を飲んでいる・いないにかかわらず子どもを一人にせず、窓や玄関を施錠し、1階の部屋で寝かせるなど、飛び降り・転落事故を防ぐ対策をしてください。

子どもは発熱中にうなされたり、泣き叫んだり、寝ぼけたようなことを言ったりすることがあります(熱せん妄)。多くは一時的なもので数分から数十分でおさまり会話がいつも通りに戻ります。熱せん妄のために再受診する必要性は低いですが、「いつもと明らかに違う状態・様子が続いてる」と感じたらすぐに相談してください。
- インフルエンザの多くは数日で自然に回復します。
- ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、小児では発症リスクをおおむね半分程度減らし、重症化を防ぐ効果も期待できます。
- 罹患してしまったら、こまめな水分摂取を心がけ、感染拡大を防ぐ行動をとりましょう。抗インフルエンザ薬は症状の期間を短くする効果があります。
- 家庭で特に注意したいのは、「意識が悪い」「繰り返すけいれん」「長く続く異常行動」です。これらはインフルエンザ脳症の可能性を示していますのですぐに医療機関を受診しましょう。
- 発症から2日間は、異常行動による事故を防ぐためにも、子どもを一人にしないようにしてください。
- 体温だけでは重症度は判断できません。いつものお子さんと比べて明らかに様子がおかしいと感じたときは、再診してください。




